RESEARCH 研究活動

長時間保育・預り保育の方針の構築:附属こども園

長時間保育・預り保育の方針の構築

詳細は → 長時間保育・預保育の方針

 

子どもの学びと育ちセンターは附属こども園と共同で、保育について研究を行っています。

 

奈良教育大学附属幼保連携型認定こども園(以下、附属子ど園)は、2024(令和6)年度から幼保連携型認定こども園へと移行しました。その中で、預かり保育と教育時間との学びの好循環をどのように創っていくべきなのかは、大きな課題であると考え、「なかよしタイム(長時間保育・預かり保育)の方針」を策定しました。

なかよしタイムの概要

附属こども園では、クラス単位で生活・活動する2号認定児の教育標準時間後の保育と預かり保育の時間、及び長期休業中の2号認定児の教育時間を「なかよしタイム」と称し、異年齢児混合の保育を行なっています。異年齢の組み合わせは、子どもの育ちや時期などを考慮して、1学期から夏季休業中を過ぎ2学期初めの1か月は、2・3歳児混合、4・5歳児混合と2グループを基本に生活し、おやつ後の夕方は、3・4・5歳児混合で保育を行なっています。その後2学期中旬以降は、3・4・5歳児合同で保育を行なっています。

 

なかよしタイム(長時間保育・預かり保育)ももちろん、本園の教育・保育目標のもとに行なっています。ただし、なかよしタイムと教育時間との学びの好循環をどのように創っていくべきなのかは大きな課題であり、子どもたちの生活や学びの連続性を大切に、それらを豊かに育むために私たちに何ができるのかを検討しました。

 

「なかよしタイム(長時間保育・預かり保育)の位置づけ」には、なかよしタイムで大切にしたい体験を、子どもたちの具体的な姿から整理しています。特に、〈教育時間となかよしタイムとの好循環〉につなげるために、本園の3つの教育・保育目標〔自分から〕〔創造する〕〔人とともに〕と対応させて、〔くらし〕〔遊びを広げる深める〕〔多様な人とつながる〕の3つにまとめたのが特徴です。教育・保育目標は、教育時間と共通であることから、図には「なかよしタイム」ならではの大切にしたい体験を取り上げて記載しています。

 

大きな理念としては、なかよしタイムでは、ゆったりとしたくらしを基礎として、一人ひとりがやりたい活動に取り組み、多様な人とつながることを通して、教育時間での学びとの好循環を目指したいと考えます。

以下では、その内容を具体的に説明しました。

〔くらし〕

 〔くらし〕は、ゆったりとした時間の中で、午後のくらしを丁寧に送り、健康で安全で充実した生活を創っていくことをねらいとしたものです。「なかよしタイム」は、少人数かつ異年齢の生活の場です。その中で、自分の役割を引き受け、当番活動なども進んで行いながら、これまで知らなかった自分の力やよさに気づいて自信をもてるような経験をしてほしいと願っています。

 

もちろん、ゆったりとした時間の流れの中で、心身の疲れを癒すことは大切です。くつろいで過ごし、緊張感と開放感の調和を意識した生活を創っていきたいと思います。また、午睡やおやつなど、教育時間にはない多様な生活経験をするとともに、少人数で丁寧にかかわれるからこそ、保育者とともに基本的な生活習慣の形成に努めたいと考えます。また、午前中の教育時間の振り返りと気持ちの整理をすることも大切にしたい時間です。

 

 以上の体験を通して、ゆったりとしたくらしの中で明日へと向かう力を蓄えるとともに、異年齢集団のくらし中で自分の役割を果たすことで自信をつけ、主体的に取り組む力を育み、それを本園の教育・保育目標の〔自分から〕の資質・能力の育成へとつなげていきます。

〔遊びを広げる・深める〕

〔遊びを広げる・深める〕は、教育時間の遊びをさらに広げたり、深めたりする贅沢な時間と空間を楽しむ体験です。少人数となった午後の時間を使い、園庭やおもちゃを贅沢に使いながら、なかよしタイムでしかできない遊びにも取り組みます。また、教育時間の中での遊びの続きを保障することも大切にしたい体験です。遊びを通して、異年齢の友達や、教育時間では接点のない多様な保育者と出会い、異なる視点、考え方、感じ方に気づき、遊びの幅を広げたり、 深めたりする体験ができるように支えます。

 

また、午後の時間の中での自然の変化に気づき、味わう体験も大切にしたいと考えています。例えば、園内の自然も、その1日の中での変化していることを肌で感じて、気づくことや、午後のやわらかな日差しや夕暮れの中で過ごす心地よさを味わうことなどです。以上のように、なかよしタイムにおいて遊びを広げたり深めたりする体験を、教育時間へと返していくことで相乗効果を生み、附属こども園の教育・保育目標の〔創造する〕力の育ちへとつながることをねらいとしています。時には、なかよしタイムでの遊びが、次の日の遊びの活躍者になるきっかけともなることも意識しながら保育を展開します。

 

〔多様な人とつながる〕

〔多様な人とつながる〕は、教育時間とは異なる人との出会いの中で、人への親しみ、かかわりを深め、一緒に活動する楽しさを知るという体験の保障です。異年齢の集団の中で、密にかかわることで、 あこがれや慈しみの気持ちを育んだり、頼ったり、頼られたりする体験を通して、互いのよさを感じながら友達への愛着や信頼感をもってほしいと願っています。多様な人とのかかわりは、人間の多様性に気づき、異なる考えや感じ方に気づく貴重な機会ともなるでしょう。

 

また、担任以外の保育者や友達の保護者、地域の大人と接することができるのも、「なかよしタイム」の魅力です。保育者にとっても、担任をするクラスの子ども以外とも出会う機会となり、それが教育時間での新たなつながりへと発展していく可能性があります。午後からの時間帯は、職員室で働く保育者の姿を見る機会もあり、様々な業者も出入りする時間でもあります。保育者や職員の働く姿、地域で働く人々の姿に接することで、人の活動の面白さ、多様性に触れる体験を大切にしたいと思います。また、多様な人々との出会いの中で、自分が大切にされることを実感し、保護者や担任の先生以外の様々な人に甘えたり頼れるようになってほしいと考えています。また、保育者も一緒に、積極的に地域へと出かけたり、地域の方々を園に招いて交流することで、地域社会や季節の行事に触れ、理解を深めてほしいと願います。

 

以上のように、異年齢の子どもや担任以外の保育者とのかかわりを広げて深めることで、教育時間においてもクラスを超えて多様な友達や保育者とかかわる楽しさを知り、〔人とともに〕協同する力を育んでいきます。

長時間保育 (2号認定の教育時間を含む)ならではの 大切にしたい体験

なかよしタイムは、夏季休業中、冬季休業中の間は、朝から夕方まで異年齢で一緒に過ごす特別な場となります。まずは、友達や保育者などの保育環境の変化、夏の暑さや冬の寒さといった自然環境の変化の中でも、いつもの暮らしを丁寧に積み重ね、生活リズムを崩さずに心と身体を安定させることが基盤です。そして、なんといってもこの長い休みの期間を利用して、園やおもちゃや時間を贅沢に利用しながら、異年齢の友達と協同しつつ、じっくりと取り組んで何かをやり遂げる面白さと達成感を味わう機会となるよう支援します。

〈教職員の連携〉〈子育て支援・地域との連携〉

「なかよしタイム」では、様々な保育者が保育を担当していることから、まずは子どもたちの【安全・健康】【安心・安定】という基盤づくりを丁寧に行います。さらに、教育時間となかよしタイムでの経験が往還し、好循環を生み出すためにも、〈教職員の連携〉は、重要です。教職員間で、子ども一人一人の情報を密に共有しつつ、日々の振り返りから子どもの姿をみとり、ねらい、環境構成・援助の意図について共通理解のもと、保育にあたれるようにします。その際、ドキュメンテーションなどを利用することも助けになるでしょう。それは、保育者のみならず、なかよしタイムを利用しない子どもたちと遊びやくらしを共有していく道具ともなります。

 

〈子育て支援・地域との連携〉についても、なかよしタイムならではの課題や、そこでこそできる取り組みがあります。特に、送り迎え時の親子の情緒的サポートや、気持ちの切り替えの手伝いをすることは大切です。保護者同士のおしゃべり場(異年齢学年の親同士の交流)や先生との立ち話の場を設定することで、気軽に相談できる雰囲気づくりを心がけ、そこでのやりとりを有効な支援へとつなげていきます。

 

〔地域との連携〕という視点では、大学内や地域の神社・公園へ散歩を通して、地域とのかかわりを深めるとともに認定こども園の役割を地域で知ってもらう機会とできるよう積極的に取り組んでいきます。 もちろん、教育時間内でも地域との連携は積極的に取り組む事項でありますが、園庭開放での交流 (ホーム訪問・こども園に遊びにきませんかの日)などを通して、子どもたちが地域の中で過ごす時間を増やしていきます。