むずかしい概念を、 やさしい絵に。 奈良教育大学附属こども園「教育・保育目標」のイラストと動画ができるまで ―― デザイン会社・スピッカートとともに作る
むずかしい概念を、
やさしい絵に。
奈良教育大学附属こども園「教育・保育目標」のイラストと動画ができるまで ――
デザイン会社・スピッカートとともに作る
令和6年4月、奈良教育大学附属幼保連携型認定こども園が開園しました。国立大学の附属園としては初めての幼保連携型認定こども園です。開園にあたり、園がどんな子どもの育ちを願うのかを言葉にした「教育・保育目標」が完成しました。
園の教育・保育目標には、保育の専門用語や、子どもの発達に関する抽象的で難しい概念、園独自のことばがたくさん含まれています。これを、保護者や地域の方、これから保育者をめざす人にも「ひと目で伝わる」かたちにしたい。そこでこどもの学びと育ちセンターは、大阪のデザイン会社スピッカートに、コンセプト図と紹介動画の制作を依頼しました。
- 基盤となる体験
- 自分から
- 創造する
- 人とともに
- 地球の中で
何度もの打ち合わせと修正を重ねてできあがったのは、とても可愛らしく、それでいて難しい概念も誤解なく読み取れる図と動画でした。どんな工夫があったのか、制作を担当されたスピッカートのみなさんにうかがいました。
完成した教育・保育目標の紹介動画

附属幼保連携型認定こども園 教育・保育目標
YouTube で見る(新しいタブで開きます)
https://youtu.be/z1C-pCYI8-s
動画は約1分30秒。ナレーションに頼らず、ストーリーで教育・保育目標が伝わる構成になっています。
株式会社スピッカート(大阪府) 細尾正行さん(アートディレクター)、田中美帆さん(デザイナー)
企業・学校・自治体などのブランディング、ロゴ・グラフィック・動画制作を手がける。spicato.com
学校や教育機関のコンセプト図やコンセプト動画としての制作は、今回が初めての取り組みでした。ただ、少し近い内容として、これまでに以下のようなお仕事をさせていただいております。
ひとつは、大阪市我孫子にある「よさみ幼稚園」さまのWebサイト内で展開している「よさみの教育」というコンテンツです。スクロールに合わせて紙芝居のように展開する仕組みで、子どもたちの自由な発想や気づきを大切にする教育方針を、「1枚の紙飛行機をどうすれば遠くに飛ばせるか?」という問いに対してどういう答えを導くかというプロセスを通して表現しました。視覚的にも楽しく、先生方の思いが自然と伝わるように工夫しています。
もうひとつは、鹿児島の「ひより保育園」さまで行われている食育の取り組みをまとめた書籍『ひより食堂へようこそ 小学生にあがるまでに身に着けたいお料理の基本』です。味覚が育つ幼少期に「お手伝い」ではなく、自分で調理を体験するというユニークなメソッドを、レシピとともに冊子として形にしました。子どもたちが見てわかりやすく、手に取りやすいデザインを心がけ、実際にグッドデザイン賞の金賞を受賞するなど、大変反響の大きかったプロジェクトです。
いずれも「教育」という大きなテーマを、誰にでも伝わる形に落とし込むという点で、今回のお仕事とも通じる部分があったように思います。
今回の制作では、まず専門的な言葉や抽象的な表現の意図を丁寧にくみ取ることが、最初に意識したポイントでした。初回のヒアリングで、今回のプロジェクトに携わる先生方が大切にされている「想い」や表現したいものの「ゴール」を、誤解なく、しかも親しみやすく伝えるためには、言葉の意味を深く理解しなければ辿り着けないと感じました。
教育目標のイラストマップの制作では、「教育目標に込められた思いを1枚の絵で表現する」という課題に対して、説明的で煩雑な雰囲気のものにならないように注意しながら、全体としての統一感や可愛らしさも大切にしました。キャラクターのサイズ感や配置、背景の山の角度なども、打ち合わせを重ねながら細部まで調整しています。また、「主体性」「自己決定」「工夫・探求」などのキーワードは、マークとして意味が伝わるか、それぞれ形が違っていても、まとまりが感じられるかに気を配ってデザインしています。
動画では、ナレーションに頼らずに教育目標が自然と伝わるよう、ストーリー仕立ての構成をご提案しました。思わず最後まで見たくなるような、動きのリズムや間合いにも工夫を凝らしています。
何度も対話の機会をいただき、丁寧にお打ち合わせを重ねさせていただけたことで、抽象的なイメージをしっかりとカタチにできたと思っています。
今回の作品の中で特に気に入っているのは、動画内で子どもたちの個性が次々と飛び出すシーンと、最後に全員でのりものに乗って山の頂上(SDGs)を目指していくラストシーンです。見る方が飽きを感じないように「引き」と「寄り」の構図変更を取り入れるなど、場面ごとのスケール感の違いを楽しめるように工夫しました。
全体の印象として、見る方に親しみや温かさを感じていただけるよう、背景には優しい風合いのテクスチャを用い、子どもたち一人ひとりの表情や仕草にもこだわり、活き活きとした雰囲気が伝わるよう心がけています。たくさんの方の目に触れ、教育目標に込められた思い、温かい印象が届けば嬉しいです。
スピッカートは、コンセプト設計からロゴやグラフィック、Web、写真、動画といった各メディアまで、一貫して制作できる体制を強みとしています。表現の手段が多様であるほど、伝えたい想いを一つの軸でつなぎ、表現として統一感があることは重要だと考えていますので、こういった体制をとっています。
制作プロセスで大切にしているのは、「一緒につくっていくこと」です。正解は最初から用意されているものではなく、お客様との対話の中で、まだ言葉になっていない想いや価値に気づき、それを丁寧にかたちにしていく――そのプロセスそのものに意味があり、そこにこそ“正解”があると私たちは考えています。
そうしたプロセスを経てできたものは、届けたい相手の心を動かすことはもちろん、お客様自身にも「これが自分たちの表現だ」と愛していただけるものになると信じています。
正解は最初から用意されているものではなく、
対話の中で、まだ言葉になっていない想いや価値に気づき、
それを丁寧にかたちにしていく。
絵コンテから動画へ
動画は、イラストマップの世界をそのまま動かすように構成されています。保育者に見守られながら子どもたちが活動をはじめ、頭の上にそれぞれの「カタチ」が現れ、やがてみんなでのりものに乗って山の頂の旗をめざす――という流れです。スピッカートさんが「特に気に入っている」と語るのが、2枚目と3枚目の場面です。
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①「基盤となる体験」のフィールドが現れ、タイトルが表示される -

②子どもたちの個性が、頭上の「カタチ」として次々と飛び出す -

③ラストシーン。全員でのりものに乗り、山の頂上(SDGs)をめざす
画像:スピッカート制作の絵コンテより
大学や附属園が、デザインのプロと組むということ
教育・保育目標は、園の実践の根っこにある大切な文書です。けれども、研究と実践の言葉で書かれた文書は、そのままでは保護者や地域の方には届きにくいものです。今回、外部のデザインのプロに入っていただいたことで、私たち自身も「本当に伝えたいことは何か」を問い直すことになりました。
打ち合わせのたびに、言葉ではうまく説明できなかったイメージが、絵として目の前に現れる。その繰り返しのなかで、目標の意味がむしろ園のなかで深まっていったように思います。研究の知見と、伝えるための専門性。その両方があってはじめて、コンテンツは園の外へ届いていくのだと感じています。
こどもの学びと育ちセンター 教員一同
- 取材・文
- 奈良教育大学 こどもの学びと育ちセンター
- 公開
- 2026年9月30日
